top of page
​今後のフォーラムは未定です
第七回ロゴ_2.png
9.8
2018
ASUKA SEPT FORUM COVER 0908s.png
第八回ロゴ_2.png

知らないでは済まされない「終末期医療」

​テーマ

あなたは「終末期」とは高齢になって病気を抱え、死をどう迎えるかを考える時期だと思っていませんか? 「終末期」はあなたやあなたの肉親に突然起こりうることで、必ずしも高齢者の問題ではありません。人生の様々なステージで「終末期」を判断することはとても難しいことです。また、その時、患者の意思と周囲の認識のギャップでどう治療や介護を進めるか問題が起こることが多々あります。正しい判断や、しっかりした考え方を身につけ、賢い患者になるためにどうすべきかみんなで考えてみましょう。

【パーキンソン病を患い、肺炎で入院したBさんのケースをもとにグループディスカッションが交わされた。

当日の内容

Sept1.jpg
sept2.jpg
sept3.jpg
sept4.jpg
sept5.jpg

​【事例】パーキンソン病を患い、肺炎で入院したBさんのケース

Bさんが救急車で搬送されてきた。Bさんの年齢は70代。パーキンソン病を患い、在宅の寝たきりで往診を受けていた。救急車による搬送時は食欲がなく、呼吸も苦しい状態であった。肺炎の徴候を示していたが、幸い容体は好転した。しかし嚥下機能はなく、栄養投与は点滴で栄養量としては不足している状態であった。この状態では胃ろうあるいは鼻からのチューブを使った消化管を使った方法が点滴よりも良い方法であった。
B氏はもはや自宅で治療を進めるのは難しく、この点は病院関係者、患者関係者を含めて共通の認識であった。その後、病院では院長、担当医師、看護副部長、病棟師長、患者サービス部長、ケアマネージャー、メディカルソーシャルワーカーなどが一堂に会し、今後の対応を検討し統一見解がなされた。この統一見解をもとに入院と今後の治療について病院側は同じ出席者で、患者側は本人の妻や親戚関係者すべてが出席して、話し合いが持たれた。
妻は、「胃ろうは延命治療だし、本人も以前望んでいたように必要ない。このままの状態で終わらせたい」と言う。妻の妹も「姉も介護で倒れると周囲も大変。できれば、病院でこのまま自然にと思っている。」と言う。それに対し、病院は、「嚥下機能は厳しいが、本人は、ご飯食べたいという意思表示があり、良い状態になっている。患者の周囲にとっては望ましい容体ではないがまだ治療すべき状態であり、いわゆる延命治療ではないと主張。本人の治療についての意思確認は、「最後は延命治療はしないで自宅で最期を迎えたい」と言っていたと妻らが主張するだけで、書面やエビデンスが残っているわけではない。反応がない、意思疎通ができない=もはや治療しても何ら好転しない状態と勝手に認識している。「長期療養が必要になると経済的な負担が増え、B氏本人自体も望んでいないし、自分たちも疲弊することは避けたい」と考えている。また「治る見込みのない状態の人間に医療費をかけて生かそうことに疑問がある。」とも。妻は、最終的には胃ろうの造設にしぶしぶ同意し、パーキンソン病の治療を継続しまだ入院されています。

 

グループA
 

パーキンソン病

パーキンソン病は進行性で病気そのものではなく、合併症を併発して悪化するケースが多いという点が興味深かった。


胃ろう

胃に穴を開け、本人の意思とは別に栄養取得を強制されているという感覚があるが、消化機能を活発化し咀嚼、嚥下機能を取り戻すことを目指すものであるという点に理解がなく誤解が生じているのではないか。人工呼吸、胃ろうなどをどうするかは、事前に意思の確認をしておくことができれば、病院側と治療方針についてトラブルを避けることができる。

 

延命治療

もはや治らない人を長く生かすということ。治療は治すものであり、治療という言葉は誤解を生む。医療技術の発達で、延命治療が可能になりこの点で今後考えるべきケースが増える。

 

終末期医療

どう対処してほしいかは考え方が変化して当然。したがって延命治療についての意思=考え方が変わってもそれを尊重してくれる医療機関を選びたい。

 

本人の意思確認

どの時点で確認すべか悩むところ。いつ「延命治療」を持ち出すかは難しい。認知症の場合は、本人の意思が変わることがあり、その判断が難しい。文章での意思確認は更新されて新しいものが有効。パーキンソン病と判断された段階で、文章で残すことが望ましいのではないか。

 

アドバンスケアプランニング

患者にどんな治療の選択肢を提示して、事前指示書で患者からの意思が明確になっていれば、患者の家族も迷うことがなくなる。これからの医療のキーワードになると思われる。

グループB
 

このケースは、「胃ろう」に限らずドクターが説明し、同意を得るというところの作業が足りなかったのではないか?とも思われる。本人の意思確認ができる時に、意思決定をきちんとすることが大事。急性期療養型の施設、終末期施設と流れていくが、終末期という宣告が本当にあったのかどうか?も問題ではないか。終末期にどこまで医療を行うかという確認。周りの身体的、精神的な限界があることも考慮すべきポイント。本人の意思確認については、その時の状況によって違うので、関係者が集まって計画的に、ACPのプロセスを踏みながら、その人にあった治療、介護の仕方が今後必要だし、福祉、介護の面からもサポートし計画は計画であって修正もありだと思われる。事前指示書も今後変更可という前提で書いてもらう。医療提供者側からも治療について十分な説明があることが必要。延命治療は本当にやっても仕方がない治療かどうかの説明が必要。「誰のための延命治療なのか」も今後の課題。家族の意思確認もなかなか難しくなっている。治療中の経済的支援についても広く情報が取れるようになれば良い。医療を受ける場合にはある程度、キーワードについて知識を得ることが必要。誰か任せではいけない。

木村病院長講評

厚生労働省のガイドライン、全日病のガイドラインを提示し、ガイドラインの骨子を説明された。また、今回のキーワード「パーキンソン病」「胃ろう」「終末期医療」「延命治療」「本人の意思確認」「アドバンスケアプランニング」「事前指示書」について、わかりやすく言葉の意味について説明された。以下主要ポイント
 

「胃ろう」と延命治療
「胃ろう」は、病状が回復することを目指して行う医療行為であり、決して延命治療ではない。このケースも、病状が好転するチャンスがある。

アドバンス・ケア・プランニング
アドバンス・ケア・プランニングの定義は「将来の意思決定能力の低下に備えて、患者さまやそのご家族とケア全体の目標や具体的な治療・療養について話し合う過程(プロセス)」。
つまり、「もしもの場合の話し合い」。この話し合いには、「もしもの場合」に、自分がどんな治療を受けたいか、または受けたくないか、そして自分という一人の人間が大切にしていること(価値観)などを、前もって大切な人達と話し合っておく、その一部始終が含まれている。アドバンス・ケア・プランニングは、「個人の意思の尊重」ためのもの。どんな病気や状況になっても、私たちは、憲法で生命、自由、幸福を追求する権利を持っており、それが最大限尊重されている。


今までは人工心肺装置を外すことは、犯罪と考えられたこともあったが、救命不能で終末期を迎えたことが関係者に理解された場合、患者の意思が確認できなくとも、「看取り」を迎えることができる。
 

bottom of page